-白日の下へU-


ことばはときにするどいやいばとなりて。



-白日の下へU-



目の前で交わされたボスとレイの会話に俺は呆然とした。

ウ、ソだ…ろ?

あの施設が始めから組織の一部だったなんて。

「ルークを引き取った夫婦、アレもてめぇの組織の構成員だな?」

「そんな事…知って、…どうする?」

「てめぇには関係ねぇ。俺の聞いた事だけ答えてろ」

目の前のやり取りに全身から血の気が引いていくような感覚を味わう。

あぁ、でもそう考えれば彼らの俺に対する態度も扱いもしっくりする。

「これで最後だ。なぜルークを選んだ?施設には他にも子供がいただろ」

「………」

出血のせいか血の気の失せた男は今にも気絶しそうになっていた。

もはや気を失った方が本人にとっては楽だったかもしれない。

しかしそれすら許さずレイは肩に刺さっていた短刀を引き抜いて怒鳴り付けた。

「答えろ!」

「ぅぐぁあ…!!」

その様子にレイの後ろに控えていたスペードが動く。

「ジェイ。それ以上やると死にます」

「……死なねぇよう手当てしとけ」

血塗れになった短刀をスペードへ返し、レイは短く告げると身を翻す。

その背に弱々しく男の声が答えた。

「…まさか、お前は…ルークの、隣に…いた…」

俺の隣?何でボスが知って。レイが俺の側にいたのは施設にいた頃だけで…。

「!?」

思い至った考えに俺は愕然とした。

レイはさっきボスに、いつ目をつけたのかと聞いていた。

まさか、まさか、そんな時から!?

レイは答えず、シンとした室内にクククッと男の狂ったような声が落ちる。

「そうか…貴様、あの施設にい…ぐぁあ―!」

次の瞬間、男は言葉を続けることが出来なくなっていた。

クルリと振り返ったレイが椅子に縛られている男の右肩に足を乗せ、そこに体重をかけて椅子ごと床に向けて倒したのだ。

男の口から溢れるのは悲鳴だけ。

「―っ」

無表情に行われた行為にビクリ、と肩が揺れる。

「…ぅっぐぅ…貴様…そ…だけに、…施設も…構成、員も…壊滅…させ…狂って…」

不意にプツリと不自然に男の言葉が途切れたと思ったら男は気絶していた。

スッと足を退け、レイは硬質な瞳で男を見下ろす。

「…ジェイ?」

ジッと動かないレイに俺は不安になって声をかける。

そうすればピクッと肩が微かに跳ねて、俯いていた顔がゆっくりと上げられる。

「ジェイ!」

再度はっきり強くその名を呼べばレイの顔に表情が戻ってくる。

よかった。正直あんなレイは見ていたくなかった。

ホッと息を吐いた俺にレイが近づいてくる。

「ジェ…」

「キング、クイーン、後は頼む」

しかしレイは俺の顔を見ることもなく横を素通りすると、俺の後ろにいたキングとクイーンにそう告げて部屋から出て行ってしまった。

…レイ?

困惑顔でレイの出て行った扉を見つめているとすぐ側からため息が聞こえた。

「はぁ。まったくジェイってばしょうがないわね。ルークちょっとついてきなさい」

「んじゃ俺はコイツの相手でもするか。スペード、ソイツの手当てが終わったらもう一度水持ってこいよ」

俺はクイーンに腕を掴まれ血生臭い部屋を後にした。



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